私の母は80代で、認知症があります。
要介護認定では要介護1で、現在も一人暮らしを続けています。
私は母とは別の他府県に住んでおり、母の家までは車で約2時間かかります。
母の一人暮らしを支える中で、特に困ったことの一つが薬の管理です。
母は、決められた日時に決められた量の薬を、自分だけで正確に飲むことが難しくなりました。
飲み忘れるだけではありません。
母の手元に何日分もの薬をまとめて置いておくと、短期間で全部飲んでしまう可能性がありました。
私は遠くに住んでいるため、毎日母の家へ行って薬を渡すことも、実際に飲んだか確認することもできません。
一人暮らしの認知症高齢者に、どうやって薬を正しく飲んでもらえばよいのか。
誰が薬を準備し、誰が飲んだことを確認するのか。
当時の私は、正直なところ手詰まりだと感じていました。
現在、母の場合は、担当のケアマネジャーさんが中心となって薬を管理し、母のところへ少しずつ持ってきてくれています。
訪問介護のヘルパーさんとも交互に母の様子を見に来てくれています。
この記事では、認知症の母が薬を一人で管理できなくなった経緯、遠距離介護で感じた難しさ、現在の服薬管理の方法、薬を減量した後に妄想や激しい言動が再び増えた体験についてお伝えします。
認知症の母が薬を一人で管理できなくなった
母が認知症になる前は、自分で薬を管理していたと思います。
少なくとも、家族が毎回薬を準備しなければならない状態ではありませんでした。
しかし、認知症が進むにつれて、
- 薬をすでに飲んだのか
- まだ飲んでいないのか
- どの薬をいつ飲むのか
- 次に飲むのは何時なのか
を本人だけで判断することが難しくなりました。
認知症では、数分前や数時間前の出来事を忘れたり、理解力や判断力が低下したりすることがあります。
母の服薬管理が難しくなった背景にも、こうした認知機能の変化が関係していたのだと思います。
飲んだことを忘れて、また飲んでしまう心配があった
薬を飲み忘れることも心配です。
しかし、私がより怖いと感じたのは、薬を飲んだことを忘れて、同じ日の分を再び飲んでしまうことでした。
母の目の前に薬があれば、
まだ飲んでいない薬だわ
と思って飲む可能性があります。
家族が電話で、
今日の分はもう飲んだの?
と聞いても、本人が正確に覚えているとは限りません。
「飲んだ」と答えても実際には飲んでいないかもしれませんし、「飲んでいない」と答えても、すでに飲んでいる可能性があります。
電話だけで正確な服薬状況を確認することには限界がありました。
一度に多くの薬を置くと短期間で全部飲んでしまう
母の手元へ一度に多くの薬を置いておくと、あっという間に全部飲んでしまう可能性がありました。
何日分の薬なのか。
朝、昼、夕、寝る前のどれなのか。
その区別を母自身で正確につけることが難しくなっていたからです。
薬は、決められた量より多く飲めば効果が高まるものではありません。
多く飲みすぎることで、副作用や中毒が起きる可能性があります。
厚生労働省も、定められた量と期間を守り、2回分を一度に飲まないよう案内しています。
そのため、母の家には大量の薬をまとめて置かず、必要な分だけ少しずつ渡す方法を考えなければなりませんでした。
車で約2時間離れているため毎日の服薬確認はできない
私が母と同居していれば、毎日決まった時間に薬を準備し、飲むところを確認できたかもしれません。
しかし、私の家から母の家までは車で約2時間かかります。
往復だけでも約4時間です。
仕事や自分の生活を続けながら、毎日薬を渡しに行くことは現実的ではありませんでした。
母はスマートフォンを持っていない
母はスマートフォンを持っていません。
普段の連絡は、
- 私はスマートフォン
- 母は固定電話
を使って通話しています。
ビデオ通話で薬の袋を映してもらうこともできません。
仮にビデオ通話ができたとしても、毎日すべての服薬時間に家族が対応するのは難しいと思います。
固定電話で「この薬を飲んで」と説明しても、母が正しい薬を手に取っているかは分かりません。
電話を切った後、本当に飲んだのかも確認できません。
離れて暮らす家族だけでは限界があった
私は長男であり、母の生活について連絡を受ける立場です。
それでも、遠くに住んでいる家族一人だけで、母の毎日の服薬を管理することはできませんでした。
家族が頑張れば解決する問題ではなく、母の近くにいる人や介護サービスの力を借りなければならないと考えるようになりました。
母が現在も一人暮らしを続けている状況や、車で約2時間離れた場所から支えている日々については、別の記事で詳しくお伝えしています。


ケアマネジャーさんへ服薬管理を相談した
自分一人では対応できないと感じ、私は母の担当ケアマネジャーさんへ服薬管理について相談しました。
現在、母の場合は、基本的に担当のケアマネジャーさんが薬の管理に関わり、母の手元へ少しずつ持ってきてくれています。
訪問介護のヘルパーさんとも交互に母の様子を見に来てくれています。
一度に多くの薬を渡すと、短期間で全部飲んでしまう可能性があるためです。


母の手元に置く薬を少量にした
現在の方法で特に重要なのは、母の家へ何日分もの薬をまとめて置かないことです。
母が手に取れる薬の量自体を少なくすることで、一度に大量に飲んでしまう危険を減らしています。
母本人に、
これは明日の分だから、今日は飲まないでね
と説明するだけでは、管理できない可能性があります。
説明を覚えておくことを前提にするのではなく、母の手元にある薬の量を調整する方が、私の母には合っていました。
厚生労働省の高齢者向け医薬品適正使用の指針でも、認知症の高齢者は服用状況を管理できない可能性が高いため、服薬を補助する人を決め、残薬や空包を確認することが挙げられています。
家族以外の人が関わることで状況を確認しやすくなった
ケアマネジャーさんやヘルパーさんが母の家を訪れることで、薬だけでなく、母の日頃の様子も確認してもらえます。
- 薬が残っていないか
- 予定より早く薬がなくなっていないか
- 母の言動や体調に変化がないか
- 生活上の新しい問題が起きていないか
遠くに住む私だけでは確認できないことがあります。
母の近くで実際の生活を見てくれる人がいることは、服薬管理だけでなく、遠距離介護全体の支えになっています。
ケアマネジャーさんが必ず薬を直接管理するわけではない
ここで注意したいのは、すべての家庭でケアマネジャーさんが薬を預かり、少しずつ持ってきてくれるわけではないことです。
これは、あくまで母の状態や地域の支援体制の中で行われている、母の場合の対応です。
本来、ケアマネジャーは本人の状態や生活環境を確認し、必要な介護サービスのケアプランを作り、事業者や関係機関との連絡・調整を行う役割があります。
実際の服薬管理では、家庭の状況に応じて、次のような人が関わる可能性があります。
- 家族
- ケアマネジャー
- 訪問介護のヘルパー
- 訪問看護師
- かかりつけ医
- 薬剤師
- デイサービスや施設の職員
誰がどこまで対応できるかは、本人の状態、医師の指示、利用しているサービス、地域や事業所の方針などによって異なります。
「認知症の親が一人で薬を管理できない」と感じた時点で、まずケアマネジャーさんへ相談し、医師や薬剤師を含めて体制を考えてもらうのがよいと思います。
薬の量を減らした後に妄想が再びひどくなった
母の薬に関しては、服薬管理とは別に、処方量を減らした後の変化にも悩まされました。
母が薬を自分で管理できず、決められた量より多く飲んでいた可能性がある時期には、物盗られ妄想や激しい言動が少し落ち着いたように見えていました。
母が以前より落ち着いたと感じたため、病院で医師へ相談し、その薬の処方量を減らしてもらいました。
薬を完全にやめたわけではありません。
あくまでも、医師に処方量を減らしてもらったという経緯です。
減量後、妄想と激しい言動が戻ってきた
薬の量を減らした後、母の妄想が再びひどくなりました。
人を疑う言動が増え、気性も以前のように激しくなりました。
物盗られ妄想や悪口が強くなり、私との会話でも感情的になることが増えました。
とにかく、母の言動が再びややこしくなり、家族として本当に大変でした。
ただし、薬を減らしたことだけが症状悪化の原因だったのか、私には判断できません。
認知症の症状自体が変化した可能性もありますし、生活環境や体調など、ほかの要因が関係していた可能性もあります。
私が体験したのは、
医師へ相談して処方量を減らした後、母の妄想や激しい言動が再び増えたように見えた
という事実です。
医学的な因果関係までは分かりません。
症状の変化を医師へ具体的に伝える必要がある
この経験から、家族が「落ち着いた」「悪化した」と感じるだけでなく、具体的な変化を記録して医師へ伝えることが大切だと感じました。
例えば、
- いつ処方量が変わったか
- その前後で何が変わったか
- 物盗られ妄想の回数
- 怒りっぽさや攻撃的な言動
- 夜間外出や睡眠の変化
- 薬を正しく飲めていたか
- 飲み忘れや飲みすぎの可能性
などです。
薬の効果や副作用を家族だけで判断し、自己判断で量を変えたり中止したりしてはいけません。
PMDAは、症状が改善したように見えても、医師や薬剤師から指示された用法・用量を守り、自己判断で用量を変えたり中止したりしないよう案内しています。
認知症の服薬管理で検討できる方法
服薬管理の方法は、本人の認知症の状態や生活環境によって異なります。
母のように一度に全部飲んでしまう可能性がある場合、薬を分かりやすく整理するだけでは不十分なこともあります。
一方、軽い物忘れの段階なら、服薬カレンダーなどで管理できる人もいると思います。
厚生労働省は、高齢者への服薬支援の例として、一包化、服薬ケースや服薬カレンダー、袋への日付や印の記載、服用回数の簡素化、お薬手帳を使った一元管理などを挙げています。
| 管理方法 | 向いている可能性がある状況 | 注意点 |
|---|---|---|
| 一包化 | 複数の薬を同じ時間に飲む | 一包化しても一度に全部飲む人には別の管理が必要 |
| 袋へ日付や時間を書く | 文字や日付を理解できる | 日付や曜日が分からない場合は難しい |
| 服薬カレンダー | 飲む日や時間を自分で確認できる | 何日分も見えると先の分まで飲む可能性がある |
| 服薬ケース | 家族などが定期的にセットできる | 本人がケースを開けて全部飲まないか確認が必要 |
| 少量ずつ渡す | 一度に多く飲む可能性がある | 誰が定期的に届けるかを決める必要がある |
| 訪問看護を相談する | 体調確認や医療的な管理も必要 | 主治医の指示や利用条件の確認が必要 |
| 薬剤師の訪問を相談する | 残薬、保管、薬の整理に困っている | 対応薬局や制度の利用条件を確認する |
| お薬手帳をまとめる | 複数の医療機関から薬が出ている | 常に最新の情報を記録しておく |
母の場合は服薬カレンダーだけでは難しい
服薬カレンダーは、薬を飲んだか確認しやすくする便利な方法です。
しかし、母の場合は、何日分もの薬が目の前に並んでいれば、先の日付の分まで飲んでしまう可能性があります。
そのため、
分かりやすく並べる
だけでなく、
母の手に取れる薬の量を少なくする
ことが重要でした。
一般的に便利とされている方法でも、本人の状態によっては合わないことがあります。
道具を導入する前に、
- 飲み忘れが中心なのか
- 二重に飲むことがあるのか
- 薬を全部取り出してしまうのか
- 日付や時間を理解できるのか
- 家族や支援者がどの頻度で訪問できるのか
を確認した方がよいと思います。
薬を飲みすぎた可能性があるときに確認すること
薬が予定より大幅に減っていた場合は、
と家族だけで判断して様子を見ない方がよいと思います。
飲みすぎた可能性があるときは、できる範囲で次の情報を確認します。
- 薬の名前
- 1錠あたりの量
- 何錠なくなっているか
- いつ飲んだ可能性があるか
- 本人の意識や呼吸の状態
- いつもと違う症状があるか
- お薬手帳や薬の袋
意識がもうろうとしている、呼吸がおかしい、普通に会話できないなど、緊急性がある場合は迷わず119番へ連絡します。
厚生労働省も、119番通報時や救急車を待つ間に、普段飲んでいる薬やお薬手帳を準備するよう案内しています。
判断に迷う場合は、医療機関、薬を受け取った薬局、日本中毒情報センターの「中毒110番」などへ相談できます。
中毒110番は、医薬品の過量服薬を含む中毒事故について、一般向けの24時間相談窓口を設けています。
電話番号は変更される可能性もあるため、利用時は公式ページで最新情報をご確認ください。
「親の薬くらい家族が管理すべき」と抱え込まなくてよかった
母の服薬管理に悩んでいた頃の私は、
家族である自分が、何とかしなければならない
と考えていました。
しかし、車で約2時間離れて暮らしながら、毎日の薬を一人で管理することはできません。
できないことを無理に自分だけで抱え込めば、母の安全だけでなく、私自身の仕事や生活も続かなくなります。
現在は、ケアマネジャーさんやヘルパーさんなど、多くの人に助けてもらっています。
家族以外の人へ薬の管理を相談することは、母を放置することではありません。
むしろ、母が自宅で生活を続けるために必要な体制をつくることだと思うようになりました。
介護を一人で抱え込み、自分の人生まで終わったように感じた時期については、別の記事で詳しくお伝えしています。


服薬管理は一度決めたら終わりではない
現在の管理方法が、今後もずっと使えるとは限りません。
認知症が進行すれば、今までできていたことが難しくなる可能性があります。
反対に、薬の種類や回数が変われば、別の方法が使えるようになるかもしれません。
- 母が薬を受け取ったこと自体を忘れる
- 薬の袋を捨てる
- 薬を隠す
- 飲むことを強く拒否する
- 飲み込むことが難しくなる
- 支援者が訪問しない時間帯の薬が増える
このような変化が起きれば、現在の体制を見直す必要があります。
服薬管理だけで自宅生活を維持できなくなれば、訪問看護やほかの介護サービス、施設入居などを含めて考えることになるかもしれません。
大切なのは、一度決めた方法に固執せず、本人の状態に合わせて、医師、薬剤師、ケアマネジャーさんなどと相談しながら変えていくことだと思います。
まとめ
認知症の母は、薬を一人で正確に管理することが難しくなりました。
飲み忘れるだけでなく、一度に多くの薬を置いておくと、短期間で全部飲んでしまう可能性がありました。
私は母の家から車で約2時間離れて暮らしているため、毎日薬を準備し、飲んだことを確認することはできません。
現在、母の場合は、
- ケアマネジャーさんが中心となって薬を管理する
- 訪問介護のヘルパーさんと交互に様子を見てもらう
- 母の手元へ一度に多くの薬を置かない
- 必要な分を少しずつ持ってきてもらう
という方法で支えてもらっています。
また、母が落ち着いたように見えたため、病院で医師へ相談して薬を減量してもらった後、物盗られ妄想や激しい言動が再び増えたこともありました。
ただし、薬の減量だけが原因だったのかは、家族には判断できません。
薬の量は自己判断で変えず、服薬状況や言動の変化を記録し、医師や薬剤師へ具体的に伝える必要があります。
服薬カレンダーや一包化も便利ですが、認知症の状態によっては、先の日付の分まで全部飲んでしまう可能性があります。
本人に合わせて、
- 誰が管理するのか
- 何日分を手元に置くのか
- 誰が飲んだことを確認するのか
- 異変があったとき誰へ連絡するのか
を決めることが大切です。
一人暮らしの認知症高齢者の服薬管理は、遠方の家族一人だけで解決できる問題ではありません。
「もう家族だけでは管理できない」と感じたら、手遅れになる前にケアマネジャーさん、医師、薬剤師などへ相談してよいと思います。
