私の母は80代で、認知症があります。
要介護認定では要介護1で、現在も一人暮らしを続けています。
母には、財布やお金、大切な物を誰かに盗られないように、自分で隠す癖があります。
ところが、隠した後にそのことを忘れてしまいます。
財布が見つからなくなると、
向かいの家の人が入ってきて盗んだ
と訴えるようになりました。
私は母が財布を隠すことが多い部屋に、見守りカメラのTapo C113を設置しました。
カメラの録画を確認すれば、母が財布を持って移動する様子を追えることがあります。
しかし、いつ財布を隠したのか分からない場合は、長時間の録画を確認しなければなりません。
毎回、私がカメラの映像を見続けることも難しくなりました。
そこで、インターネットで認知症の親の持ち物にAirTagを入れている事例を知り、私も母の財布に1個入れてもらうことにしました。
AirTagは、Appleの「探す」アプリを使って財布や鍵などの持ち物を探すための製品です。
この記事では、認知症の母の財布にAirTagを入れた理由、最初に失敗したこと、孫の名前を刻印した工夫、実際に使って感じたメリットと限界を紹介します。
見守りカメラだけでは財布探しに時間がかかった
母が財布を隠す部屋には、Tapo C113を1台設置しています。
もともとは、母が自分で財布を隠したのか、本当に誰かが家へ入ったのかを確認するために導入しました。
母がどこに財布を置いたか録画に映っていれば、探す場所をある程度絞れます。
しかし、録画を確認する方法には限界がありました。
いつ隠したのか分からないと録画を長時間確認することになる
母から、
財布がない
また向かいの人に盗られた
と電話がかかってきても、いつ財布がなくなったのか本人には分かりません。
前日まではあったのか。
数日前からなかったのか。
最後に財布を使ったのはいつなのか。
母の記憶を頼りにしても、正確な時間が分かりません。
そのため、カメラの録画を長い時間さかのぼることになります。
母が財布を手にしている場面を見つけても、家具や母の体に隠れて、最後に置いた場所まで見えない場合もあります。
見守りカメラは母の日常を確認するうえで役立っていますが、財布を素早く見つける道具としては十分ではありませんでした。
見守りカメラを導入した経緯や、ポケットWi-Fiを使って遠方から確認している方法については、別の記事で詳しく紹介しています。


認知症の母の財布にAirTagを入れてみた
そこで導入したのがAppleのAirTagです。
AppleはAirTagを、財布、鍵、バッグなどの持ち物を「探す」アプリで見つけるための製品として案内しています。持ち物が近くにある場合は、対応するiPhoneで場所を探したり、AirTagから音を鳴らしたりできます。
母が隠す物の中でも、特に困るのが財布です。
財布には現金だけでなく、日常生活で必要な物も入っています。
母の家へ行くたびに家の中を探し回るのは大変です。
そこで私は、財布そのものを探せるようにAirTagを入れてもらいました。
母はスマートフォンを持っていない
母はスマートフォンを持っていません。
普段の連絡は、私がスマートフォン、母が固定電話を使って通話しています。
AirTagの設定や位置の確認は、私のiPhoneで行います。
母自身が「探す」アプリを操作するわけではありません。
母から固定電話で、
財布が見つからない
と連絡があったときや、私が母の家へ行ったときに、私のiPhoneでAirTagの場所を確認します。


1個目のAirTagは財布から取り出されてしまった
AirTagを財布へ入れれば、すぐに問題が解決すると思っていました。
しかし、最初はうまくいきませんでした。
母は財布に見慣れない丸い物が入っていることに気づくと、AirTagを取り出してしまいました。
財布からAirTagを出し、今度はAirTagそのものをどこかへ置いてしまいます。
これでは、財布を探すために入れた意味がありません。
財布を探すはずがAirTagを探すことになった
AirTagが財布から取り出されると、「探す」アプリに表示されるのはAirTagの場所です。
財布とAirTagが別々になっているため、AirTagを見つけても財布は見つかりません。
私は、
せっかく買ったのに、これでは使えないな
と思いました。
認知症のある人に便利な道具を持ってもらおうとしても、家族が想定したとおりに使ってくれるとは限りません。
AirTagの性能以前に、母が財布へ入れたままにしてくれる方法を考える必要がありました。
最初に購入したAirTagは、現在は私自身が使っています。
2個目のAirTagに孫の名前を刻印した
1個目がうまくいかなかったため、2個目を購入することにしました。
Appleのオンラインストアでは、AirTagに名前、イニシャル、数字、絵文字などを無料で刻印できます。
そこで私は、2個目のAirTagに母の孫の名前を入れて注文しました。
母にとって、見覚えのない機械ではなく、孫の名前が入った物にしたらどうだろうと考えたからです。
孫の名前を入れると財布から出さなくなった
結果として、2個目のAirTagは財布から取り出さなくなりました。
AirTagに孫の名前が入っているため、母にとっては意味の分からない機械ではなく、家族とのつながりを感じる物になったのかもしれません。
母に理由を詳しく確認したわけではないため、本当に刻印だけが理由だったかは分かりません。
それでも、1個目はすぐに財布から出してしまったのに、孫の名前を入れた2個目は出さなくなりました。
私の母の場合は、この小さな工夫が非常に役立ちました。
すべての認知症の人に同じ方法が通用するとは限りません。
ただ、本人が大切に思っている人の名前や、本人にとって意味のある印を入れることで、知らない物として捨てたり取り出したりする可能性を減らせることもあるのだと感じました。
1個目はせっかく買ったのにもったいないので、私の車のキーに付けて使っています。
母の家で隠された財布を見つけやすくなった
AirTagを財布から取り出さなくなってからは、母の家で財布を探しやすくなりました。
私が母の家へ行ったとき、「探す」アプリでAirTagを選びます。
AirTagが近くにあれば、対応する機能を使って場所を絞ったり、AirTagから音を鳴らしたりできます。壁や家具などの障害物、iPhoneとAirTagの組み合わせ、周囲の環境によって探しやすさは変わります。
家中を手当たり次第に探さずに済むようになった
以前は、母が財布をどこへ隠したのか分からず、
- 引き出し
- 棚
- 箱の中
- 衣類の間
- バッグの中
- 家具の陰
などを順番に探していました。
母が大切な物を隠す場所はある程度決まっていますが、毎回同じ場所とは限りません。
AirTagを使うようになってからは、iPhoneを見ながら財布がありそうな方向や場所を絞り込めます。
近くまで行って音を鳴らせば、家具や物の下に隠れている財布を見つけられることもあります。
母の家へ行ったときに、隠された財布をすぐ見つけられるようになったことは、かなり助かっています。
母が財布を持って外出したときの手がかりにもなった
AirTagは、最初は家の中で財布を見つけるために導入しました。
しかし、使い続けるうちに、母が財布を持って外へ出たときの手がかりにもなりました。
母には、一人で家の外へ出てしまうことがあります。
夜間に外出したことや、警察に保護されたこともあります。
母が財布を持って出かけている場合、「探す」アプリに表示されるAirTagの位置を確認することで、財布がどのあたりにあるのかを把握できることがあります。
私の感覚では、結果的に「GPS代わり」のように役立った場面もありました。
ただし、正確には母本人の位置ではなく、母が持っている財布のAirTagの位置を確認していることになります。
財布を持たずに外出すれば場所は分からない
母が財布を家に置いたまま外出すれば、AirTagは役に立ちません。
「探す」アプリには、家に残された財布の位置が表示されるだけです。
また、財布を外出先で置き忘れた場合も、表示されるのは母ではなく財布の場所です。
そのため、
AirTagを財布に入れれば、母の居場所が必ず分かる
とは考えない方がよいと思います。
母の一人暮らし、夜間外出、警察による保護など、現在の遠距離介護の状況については、別の記事で詳しく紹介しています。


AirTagはGPS端末ではない
AirTagを認知症の家族に使う場合、最も注意したいのは、AirTagが人を見守るための専用GPS端末ではないことです。
AirTagはBluetoothとAppleの「探す」ネットワークを使い、近くのApple製デバイスなどが検知した情報をもとに、持ち物のおおよその場所を所有者へ知らせる仕組みです。「探す」ネットワークの通信は匿名化・暗号化されています。
Appleも、AirTagは人やペットではなく、持ち物を探すことを目的に設計された製品だと案内しています。
位置情報がリアルタイムで更新されるとは限らない
AirTagの近くに「探す」ネットワークへ位置情報を中継するデバイスがなければ、位置情報がすぐに更新されない可能性があります。
人通りやApple製デバイスが少ない場所では、表示される位置が古いままになることも考えられます。
また、地図に表示される位置と、実際の場所にずれが出ることもあります。
そのため、母が外出して見つからないときに、AirTagだけを頼りにすることはできません。
緊急時には警察、地域の見守り体制、介護関係者などへの連絡が必要です。
専用の見守りGPSとは役割が異なる
認知症の人の外出を把握することが主な目的なら、専用のGPS端末や見守りサービスの方が適している場合があります。
AirTagは月額通信料が発生しない持ち物用タグとして便利ですが、
- 常に現在地が分かるとは限らない
- 本人が財布を持っていなければ役立たない
- 緊急通報機能がない
- 家族や支援者へ自動的に連絡する機能がない
といった限界があります。
私の場合も、AirTagだけで母の安全を守っているわけではありません。
ケアマネジャーさん、訪問介護、デイサービス、見守りカメラなどと組み合わせて使っています。
認知症の親にAirTagを持ってもらうときの注意点
AirTagは小さく便利ですが、認知症の親に持ってもらう場合は、いくつか注意した方がよいことがあります。
本人に説明し、納得を得て使う
AirTagは人の行動を監視する目的で使う製品ではありません。
Appleも、相手の承諾を得ずに人を追跡する目的では使用すべきでないと明記しています。
私の場合は、AirTagを母の財布に入れてもらっています。
家族であっても、本人が理解できる範囲で、
- 財布を見つけるために入れること
- 家族のiPhoneから財布の場所を確認できること
- 外出時にも財布の位置が表示される場合があること
を説明しておくことが大切だと思います。
認知症の状態によって、説明をどこまで理解できるかは異なります。
家族だけで判断しにくい場合は、ケアマネジャーさんなどへ相談する方法もあります。
AirTagが音を鳴らす場合がある
AirTagには、迷惑な追跡を防ぐ仕組みがあります。
持ち主のiPhoneから離れた状態でAirTagが人と一緒に移動していると、周囲のiPhoneやAndroidスマートフォンに通知が表示されたり、AirTag本体が音を鳴らしたりする場合があります。
母はスマートフォンを持っていませんが、母と長時間一緒にいる第三者のスマートフォンへ通知が出る可能性があります。
AirTagから突然音が鳴り、母が驚いたり、財布から取り出したりすることも考えられます。
何度か母のそばで鳴ったことがありますが、母は特に気にする様子はありませんでした。聞こえていないのか、またはそんなものなんだろうと思っているようです。
電池切れにも注意する
AirTagは電池で動いています。
電池残量が少なくなると、ペアリングしているiPhoneへ通知が表示されます。
AirTagの電池はCR2032のコイン型電池で、家族が交換できます。
財布へ入れたまま忘れていると、必要なときに電池が切れていたということもあり得ます。
定期的に「探す」アプリを開き、正常に表示されるか確認しておく必要があります。
AirTagを使って感じたメリットと限界
私が実際に使って感じたことを整理すると、次のようになります。
| AirTagで助かったこと | AirTagでは解決できないこと |
|---|---|
| 家の中で財布を探しやすい | 母が財布を持っていなければ居場所は分からない |
| 音を鳴らして探せることがある | 常にリアルタイムで更新されるとは限らない |
| 外出時の財布の位置が手がかりになる | 夜間外出そのものは防げない |
| 月額通信料を別途契約せず使える | 転倒や体調不良は検知できない |
| 孫の名前の刻印で外さなくなった | 本人がAirTagを取り出せば役立たない |
AirTagは認知症介護の問題をすべて解決する物ではありません。
それでも、母が何度も財布を隠し、家族が探し回っていた状況では、非常に役立つ道具になりました。
AirTagが役立つ可能性がある家庭
私の体験から考えると、AirTagは次のような状況で役立つ可能性があります。
- 認知症の親が財布や鍵を何度も隠す
- 自分で隠した場所を忘れてしまう
- 家族が毎回、家中を探している
- 親が財布を普段から持ち歩く
- 家族がiPhoneを使用している
- AirTagを財布から取り出さずに持ってもらえる
- AirTagの限界を理解したうえで補助的に使える
一方で、親の外出時の見守りを主な目的にする場合は、AirTagだけで十分とは限りません。
本人の生活状況、外出時に持つ物、地域の通信環境、家族がどのような対応を必要としているかを考えて選ぶ必要があります。
まとめ
私は、認知症の母が財布を隠して場所を忘れ、向かいの人に盗られたと訴えるため、財布にAirTagを入れてもらいました。
見守りカメラでも母の行動を確認できますが、長時間の録画から財布を探すのは大変でした。
AirTagを使えば、私が母の家へ行ったときに、iPhoneの「探す」アプリから財布の場所を絞り込みやすくなります。
ただし、最初に購入したAirTagは、母が財布から取り出してしまいました。
そこで2個目には、母の孫の名前を刻印しました。
すると、母はAirTagを財布から出さなくなりました。
私の母の場合は、機能だけでなく、本人にとって意味のある名前を入れるという工夫が役立ちました。
AirTagは、母が財布を持って外出した場合に、財布の位置を確認する手がかりになることもあります。
しかし、AirTagはGPS端末ではなく、人の見守りを目的とした製品でもありません。
母が財布を持たずに外出した場合は役に立ちませんし、位置情報がリアルタイムで更新されるとも限りません。
AirTagだけに頼るのではなく、見守りカメラ、介護サービス、家族や地域の支援などと組み合わせて使う必要があります。
それでも、母が隠した財布を探すために家中を歩き回っていた私にとって、AirTagは介護の負担を少し減らしてくれた便利な道具です。
